2014.04.21
花が咲きはじめると、桃園はにわかにいそがしくなります。
今年は、チビネが応援にきてくれました。
シロネとクロネはおおよろこび。
ちいさいけど、ちゃんとお手伝いできるのかな?
「それじゃあ、いっしょに花摘みをしよう」
「どうして はなをつむの?」
「花粉をあつめるためだよ。それから、桃の実をへらすため」
「どうして もものみをへらすの?」
「おおきくておいしい桃をつくるためさ」
「花粉がたくさんとれるのは、咲く直前の、
風船みたいにふくらんだつぼみだよ」
「はい」
「まず、枝の先と根もと、上向きの花を落としていくよ」
「どうして うえむきのはなを おとすの?」
「桃は下向きにつくるんだ。下向きのほうが、日焼けや
風の被害がすくないし、作業もずっとらくだからね」
「ふうーん…」
言われたとおりやってみると、チビネにもかんたんにできました。
「見て!ちいさいのに、あんなに高い脚立にのぼってる」
「たのもしいね~」
今日は、べつの畑で、受粉作業をします。
花摘みも受粉も、花が咲いている短いあいだの、
天気の良い日にかぎられます。
さっさっとやらないと、間に合いません。
「どうして このまえの はたけじゃないの?」
「あのね、桃には花粉のある木とない木があって、
この前の畑は花粉のある木、ここは花粉のない木なんだ。
花粉がないと桃の実はできないから、
この前の畑で集めた花粉をつけてあげるんだよ」
「ふうーん…」
「この毛ばたきに、たっぷり花粉をつけて、
花の上をそうっとなでていくんだ。やってごらん」
チビネは長い毛ばたきをつかって、
そうっとじょうずにつけました。
「そのちょうし、そのちょうし」
「さあ、みんなでどんどんやっちゃおう」
「それからもうひとつ。
受粉中は、作業している枝から絶対に目をはなさないこと。
桃の枝はどれもにていて、どこまでやったか、
すぐわからなくなっちゃうからね。
花粉は目に見えないし…」
「・・・・」
「あれ?」
クロネは思わずチビネのいたところに目をやりましたが、
すがたがありません。
「あ、あそこにいる」
シロネが見つけてゆびさしました。
チビネはチョウを追いかけていたのです。
「まだちいさいからね…」
「そうだね…」
これでチビネの分はもちろん、
うっかり目をはなしたシロネとクロネの作業もやり直しです。
いそぎましょう、春がおわってしまいます。