日本の海を舞台に新たな物語を紡いでいきたい

ブルース・R・ベイリー
日本ロレックス株式会社 代表取締役社長

10分間の潜水を可能にするスクーバがフランスで考案されたのに伴い、世界初の防水時計「ロレックス オイスター」が誕生したのは1926年のことでした。以来、ロレックスは人類の海への憧れや関心に応えるように、時計史を塗り替える数々の革新を成し遂げてきました。とりわけ潜水技術が劇的な変化を遂げた1950年代から60年代にかけては、ロレックスの革新も目覚しいものでした。アクアラングの開発で知られるジャック・イブ・クストーが「沈黙の世界」を上梓した1953年には水深100メートルでの防水を実現し、翌年にはさらに水深200メートルまでその機能を拡大。1960年にフランスの「トリエステ号」がマリアナ海溝で1万メートルを超える潜水記録を打ち立てたときにも、ロレックスは船外に装着された特殊なオイスター時計でその歴史的な時間を記録しています。このように人と海が新しい物語を紡ぎはじめるとき、ロレックスはその物語を象徴するように「革新」を生み出してきました。

そして今回、ロレックスでは新たな物語の舞台を日本とし、その物語を通じて環境の時代にふさわしいメッセージを発信していきたいと考えました。その理由は、島国である日本が世界有数の自然環境と共生する知恵にあふれた国だからです。残念なことに、近年、その知恵は失われつつありますが、年々地球環境の悪化が深刻化する今、そうした知恵は人類全体で受け継いでいくべき貴重な財産であると認識すべきです。ロレックスではそんな日本の知恵を求め、列島各地を訪ね歩き、その経験を未来へと語り継がれる物語に編纂したいと考えたのです。

日本には古くから伝わる「わだつみ」という言葉があります。「わだ」は「わた」が濁ったもので「海」を意味し、「つ」は「~の」、「み」は「神霊」を意味する古語、つまり「わだつみ」とは「海の神様」を意味します。そして海の神様には、海底をつかさどる「そこつわたつみ」、海中をつかさどる「なかつわたつみ」、そして海面近くをつかさどる「うえつわたつみ」の三神がおられるという話を聞いたことがあります。海はきれいなものばかりでなく、人間の目には醜く見えるものもたくさんいます。でも、そうしたものたちが一体となって海はいつも美しく輝いているのです。海をつかさどる三神の存在は、そんな海に対する日本人の深い畏敬の現れなのでしょう。

本プロジェクトが求める伝統的な知恵も同じです。どんな知恵も、日本人ならではの豊かな海を想う感性から生まれたものにほかなりません。

失われつつあるように思える知恵ですが、実はまだまだすばらしい知恵が各地でしっかりと生き続けています。もしかすると、それは各地の「海神」様のおかげなのかもしれません。

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